2025年11月8日、オーストラリアを皮切りにはじまったオーケストラコンサート『DEATH STRANDING Strands of Harmony World Tour』は、19の地域、全21公演を終えた。
今回、本ツアーを手掛けたSOHO Liveから、イベントの総指揮を行ったガエタノ・ファツィオCEO、そして『DEATH STRANDING(以下、デススト)』シリーズの音楽を手掛けコンサートツアーにも参加したルドウィグ・フォシェル氏に、コンサートツアーの成り立ちからたっぷりと語ってもらった。
ガエタノ・ファツィオ(文中、ガエ)
SOHO LiveのCEO。今回のツアーではコンサートプロデューサーとしてイベントを指揮。
SOHO Live Official Website: https://www.soho-live.com/
ルドウィグ・フォシェル(文中、ルド)
今回のツアーではデスストの作曲家の一員として、全ての公演に参加。
2021年までコジマプロダクションに勤め、現在はフリーランスのコンポーザーとして、様々な作品の音楽を提供。
X: https://x.com/Ludvig_Forssell
※写真左からルドウィグ氏、ガエタノ氏
Q. 今回のコンサートツアーの企画は、いつ頃から始まったのでしょうか。
ガエ:
私からコジマプロダクションにツアーを企画提案して、そろそろ2年が経ちますね。ルドさんが合流したのはもう少し後でしたか。
ルド:
そうですね、僕が合流したころにはもう会場のブッキングも始まっていたころで、どういうコンサートにするかといった内容を決める段階でした。 アレンジャー(※)のチャドさん(チャド・セイター)と一緒にアレンジの方向性や選曲から始めたんですけど、デスストってフルオーケストラじゃない曲が多いので、原曲からガラッと変えるものもあり、とにかく初挑戦だらけでしたよ。 早い段階で互いに意見を出し合えたのもあって、良いアレンジに仕上がったと思います。
※アレンジャー:編曲家
Q. オーケストラの企画提案に至ったきっかけは何でしたか?どこに親和性を感じたのでしょうか。
ガエ:
日々オーケストラに変身させられそうなタイトルを探しているのですが、大きく3つのポイントで考えています。 1つは一定以上のファンベースがいること、次に良いサウンドトラックがあること、最後にファンの熱量。 どれか1つでも当てはまらなければ実現はできません。 私が声をかけた時は、確か『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH(以下、デススト2)』のアナウンストレーラーが出た頃でした。 トレーラーの中にあったコーラス入りの楽曲に惹かれ、前作とも違った音楽の幅広さを感じました。 デスストファンは熱量もすさまじいので、3つの条件すべてにマッチしていると思い、オファーさせていただきました。
ルド:
確かに3つの条件は揃っていると思いましたが、Low Roarさんの楽曲をはじめ、デスストの音楽の根本にある魂として歌を活かさないと成り立たないと感じていました。 その点今回のツアーでは世界中から最高のボーカリストをそろえていただいたおかげで、他のゲームコンサートには無い強みとしてStrands of Harmonyが完成したと感じています。
Q. 今回オーケストラアレンジされた曲の中で、特にお気に入りや思い出深いものは何でしょうか。
ルド:
自分で言うのも恥ずかしいんですけど、やっぱり「BB’s Theme」は外せないですよね。 いろんな方と一緒に作り上げたものなので、自分にとって特別な曲です。 それに、今回のコンサートでついに、「BB’s Theme」の歌手であるジェニーちゃん(ジェニー・プラント)と一緒にパフォーマンスできたことが嬉しかったです。
2020年の3月にイギリスアカデミー(BAFTA)の会場で一緒にパフォーマンスする予定だったんですが、コロナ禍の影響でイベント自体が中止になって…やっぱりその未練がずっとあったわけです。4,5年ずっと待ちわびてやっと実現したパフォーマンス。最高の思い出になりました!
ガエ:
私もルドさんとジェニーさんの「BB’s Theme」は推したいですね。デススト1はもちろん2にとっても大切な曲なので、用意する映像もとくに気を配っていただきました。私自身も一人のファンとして、最高のパフォーマンスに仕上がったのではと感じています。なにより曲が終わった後のファンの表情を見ると、感慨深いものがありました。
ガエ:
他には…思い出の曲はたくさんあって難しいですが、どのコンサートでも楽しみにしていたのが、「Car Go Fast」ですね。 他の曲はスクリーンにカットシーンやストーリーの様子が映されるのですが、この曲のパートはハイエナジーなゲームプレイの動画にしています。 ルドさんの生ギター演奏を行った公演もあり、ファンたちが楽しめる面白い構成になったかなと感じています。
ルド:
もう1つ、コンサートでは第2アクトのスタート1曲目、WOODKIDさんの「Minus Sixty One」。 もとの原曲には無いが収録されていた幻のパートがあるんですが、今回のオーケストラアレンジをしていくなかで、WOODKIDさんにも監修いただき復活させました。 インパクトのあるロングトーンが特徴なんですけど、北米地域を担当したボーカリストのトニー(トニー・フラハティ)が、公演ごとに1小節…2小節…とロングトーンパートを伸ばしていったんです。 まだ曲途中なのにものすごい歓声と拍手が巻き起こった公演もあって、すごくかっこよくてトリハダが立ちました。 北米地域の後半は、ロングトーンも30秒くらいになってたかな(笑)。
ガエ:
ミラノ公演でも、担当ボーカリストのマット(マット・ケント)とデイジー(デイジー・シュート)が、ジェニーの「BB’s Theme」にコーラスやハーモニーを入れたりしていましたね。参加いただいたシンガーの誰もが、クリエイティブな姿勢で曲と向き合ってくれました。
ルド:
そうだね、確か…パリ公演のあとだったかな。 ホテルやバックステージで練習していました。 ジェニーが歌っている途中から登場させて、まるで特別バージョンかのような雰囲気を出せましたね、懐かしいです。
Q. ボーカリストたちの提案で、公演ごとにいろいろと工夫や遊びが加えられていったんですね
ガエ:
難しいところではあるんです。 ゲームの原曲スコアがあるので、変えすぎても違和感が強く出てしまいますので。 各公演でファンのリアクションを見つつ、どこまで砕けて良いのかを現場で確認・調整して、次の公演に活かすようにしていました。
ルド:
僕は同時に出演者でもあるので、何かできないかと全公演でトークの内容は変えるようにしていました。 それでもツアー後半は用意していたジョークも枯渇してきたんで、トロイさん(トロイ・ベイカー)に「ちょっとビデオメッセージくれないか」って声かけたりしました(笑)。
Q. ワールドツアーの中でファンたちとの思い出はありますか
ガエ:
どのアニメ、ゲーム作品にも独自の文化やファンコミュニティがありますが、初めてオーケストラコンサートに参加したという人が9割を占めるのは、ほとんどの作品で共通しています。 オーケストラを聴くためにクラシックな劇場へ行くとなると、敷居が高いと感じたり、行く勇気が無いと諦めたりする声が多くあるんですが、逆にデスストや小島監督のファンたちの反応は「行ったことがないから行ってみたい」という反応ばかりで。 知らない世界に飛び込み、同じ想いの人たちと繋がることが、まるでそれが当たり前のような雰囲気でした。 コスプレやゲーム内のアイテムを持参する人も多く、コンサートでの体験を作品の一部として受け入れられているようで、とても嬉しかったですね。
ルド:
僕はとにかく、ミートアンドグリート(※)でパワーをもらいました。 21公演で移動も準備もものすごく大変なんですけど、ファンたちから直接オーケストラやデスストの感想をもらえると、頑張りが報われた気分になるし疲れも吹き飛びますよ。 2日連続の公演スケジュールでも問題なく頑張ることができたのは、世界中のファンのおかげです。
確かミラノ公演の時だったかな、ファンから手作りのヒッグスのマスクをもらったので、その後の公演で使用させてもらいました。 ゲーム中でもヒッグスが演奏している曲のパートだったから、そういう繋がりも演出できたかと思います。 デススト関係のメイクもするようになっていきましたし、普段トロイさんとも仲良くさせてもらってるので、コンサートを通じてヒッグスと強い繋がりを得たのかなと思っています(笑)
※ミートアンドグリート:通称ミーグリ。主にファンとアーティストの交流イベントを指す。今回のツアーでは会場によってルールが異なるため、一部の公演に限り実施された。
Q. ギター演奏は当初から決まっていたのでしょうか、実際に行ってみていかがでしたか?
ルド:
僕のようなメディア系のコンポーザーにとって、ステージにあがらせてもらえる機会は貴重です。 このチャンスを逃したくなくて、全公演に行けるようスケジュールを調整しました。 すべての会場での演奏は叶いませんでしたが、関わるなら絶対に演奏したいという想いで最初から決めていたことです。
とはいえ、最初の演奏会場が世界的に有名なあのシドニーのオペラハウスになるとは(笑)初日はすごくプレッシャーを感じましたが、本当に特別な体験になりました。
ガエ:
「オーケストラコンサート」と聞いて、何を着れば良いか、どう拍手すれば良いのか、声出して良いのかなど何も分からなくて緊張している人が大半です。 そういう人たちにとって、ギター演奏という比較的身近で派手なものだからこそ、盛り上がりポイントもわかるし緊張がほぐれるきっかけになったと思います。 ルドさんはとても大事な役割を担ってくれました。
Q. グッズについてはSOHO Liveさんからの提案でしょうか。またお気に入りのグッズはありますか?
ガエ:
ラインナップを弊社から提案させていただいて、そこからコジマプロダクションさんと一緒に調整していきました。 なかでもハーモニカは、様々な楽器メーカーと相談した結果、老舗ハーモニカメーカーの鈴木(鈴木楽器製作所)さんとのコラボになりました。 10種類以上のデザイン案をもとに、最終的に小島監督からいただいたフィードバックを反映させたもので、かなりこだわったデザインで気に入ってます。
買えるグッズでは無いですけど、ルドさんがアレンジした「BB’s Theme」のピアノアレンジ譜面も用意しましたね。 とんでもなく難しいアレンジです(笑)。
ルド:
あぁ(笑)、ミートアンドグリートに参加してくれたファンのために、あえて少しチャレンジングなものを用意しました。 「BB’s Theme」といえば、ミュージックボックスのオールゴールアレンジも僕が譜面に落として作ってもらったものです。 デザインもBBポッドをイメージして作ってもらいました。
ガエ:
他のグッズがデスストを基調とした白黒イメージのものが多いので、オルゴールは色んなグッズが並んでいるところに差し色として目立っていました。 その結果、購入制限数を設けるくらいには人気だったようです。
ハーモニカもオルゴールも、せっかくのコンサートですから音楽と直接繋がりのあるグッズにと準備したのですが、公演中に鳴らなくて良かったです(笑)。
Q. 今回のコンサートで直面した課題や、次回があればどう改善したいですか?
ガエ:
前半デススト、後半デススト2で各1時間しかないので、どうストーリーを見せて1時間にまとめるか…というのが1番大変でした。ファンたちが聴きたい曲を優先して選んでいったのですが、もし叶うなら、もっとたくさんの曲を追加したかったですね。
ルド:
SOHO Liveさんたちがデススト2の内容をまとめはじめたのはゲームが発売されてから(ツアー開始の5ヵ月前)でした。よくこの短期間にうまくまとめてくださったなと思うんです。
ガエ:
ストーリーを把握のためのゲームプレイも、少しスピードランみたいになっちゃいましたね(笑)。 プレイする中でどの曲が良いか、どのストーリー部分が良いかなどを細かくExcelシートに記録して、どうにか1時間の構成にまとめました。
コンサートに来るほとんどの来場者は作品のファンたちなので、ゲームをプレイするなかでどういった場面でどんな感情を持ったのか、想ったのかはとても重要です。 ただ公演時間には限りがあるので、「この曲ならこの場面も想起できるかな」と、様々な項目でまとめていきました。 メインストーリーを重点的にプレイしていきましたが、本当はもっとサブクエストの内容もコンサートに含めたかったです。 そうですね…全体で3時間くらいあれば足りるかな。
ルド:
そうですね、3時間くらいの公演であれば、自分も満足できるかな(笑)。
Q. 最後に、19会場を完走していかがでしたか?各会場に足を運んだ世界中のサムに向けて、お二人から改めてメッセージをお願いします
ルド:
デスストのファンたちと直接会えることが出来て、自分の携わった作品の影響力を改めて深く知ることが出来ました。 このような貴重な体験をできたのは、世界中のファンの声が大きいと思います、来てくれた皆さん、声をかけてくれた皆さん、本当にありがとうございました。
コンポーザーとしてステージに立ち、コンサートに参加させていただく機会は本当に少ないのです。 皆さんが声を挙げてくだされば、またやらせていただけるかもしれないので、ぜひ応援してください(笑)!
ガエ:
コンサートに足を運んでくれたファンの皆様に「ありがとう」という気持ちでいっぱいです。 長い旅でしたが、世界中のデスストファンがシドニーからトロントまでの素晴らしい旅路を繋げてくれました。 多くの方々が初めてオーケストラコンサートに出かけられたかと思いますが、お楽しみいただけたでしょうか。 今回のイベントがデスストファンにとって、新しい発見のきっかけになれたのなら幸いです。 ありがとうございました。
DEATH STRANDING Strands of Harmony
Thank You Message
- YouTube Link: https://youtu.be/CPK1zSBNIuo
- Message by:
- CONDUCTOR:Thanapol Setabrahmana / Kurita Hirofumi
- VOCALIST:Jenny Plant / Nan Sathida / Tony Flaherty / Yosh (Survive Said The Prophet)
👍👍👍
プレイヤー(サム)を支えてきた楽曲たちが、オーケストラになって再び世界を旅した
その旋律が結んだ無数のStrands(記憶)たちは
これからも静かに、そして確かに世界中のサムワンと繋がり続けていく
Official Website: https://www.deathstrandingconcert.com/